「…てめぇら、…死にてぇのか?」
重低音のドスの利いた声が響いた。
だが、大喜の笑いは止まらなかった。
「…まだ、…話は終わっちゃ、いね~んだよっ。死んだら、聞けね~ぞ。特にそのガキには、朗報だというのになっ、」
勇一が、懐中電灯をベッドの端に置くと、懐から短刀をわざとらしくチラつかせた。
「組長、何もそんなものを出さなくても」
黒瀬ならいざ知らず、勇一が本気で自分達に刃を向けるはずがないと佐々木は余裕だった。
その読みは、ある意味正しかった。
「いいから、話を聞きやがれっ。こいつがどうなってもいいのか?」
勇一は短刀を抜くと、それをシュウちゃんに向けた。
「卑怯だぞっ!」
やっと、大喜の笑いが止まった。
「まだ話の途中だ。静かに聞けば、こいつを傷物にはしね~から、安心しろ」
「ダイダイ、組長の話を最後まで聞こう。ここに長居されたくないなら、それしかない」
でも、と反論仕掛けた大喜だったが、その口を佐々木の手が塞いだ。
「佐々木、お前もたいがい失礼なヤツだ。ま、いい」
「続きをお願いします。キューピットになって下さるとは、どういう意味でしょうか? アッシもダイダイも、この通り、仲良くやってますが」
「ああ、俺もそう思ってたさ。勝貴に会うまでは。俺とお前の仲はヒビが入りまくりだけどな。まあ、それはお前のせいじゃない。俺が悪いんだから気にするな」
佐々木の手に塞がられた口で、大喜が『ねちっこいヤツ』と言っていた。
もちろん、言葉としての形は成してない。
「…いえ、…それは、アッシにも…責任が」
『ないだろ、オッサンには!』と、今度は目で語ってみた。
が、佐々木に気付いてもらえなかった。
チェッ、と大喜が拗ねたが、それも気付いてはもらえなかった―――という大喜のことは今は重要ではない。
佐々木の重要事は、今、目の前に勇一がいる理由だけだ。
「表面上だけなんだろ、お前達。籍はまだにしても、夫婦当然のはずなのに、ヤることやってないんだってな」
やっと勇一が核心に触れた。