「不満足だ!」
「ウルサイ。大声出すな。今、俺は佐々木さんと大森の話がしたいんだ。劣化バージョンの勇一のせいで、あれから二人は一度もヤッてないんだ」
「…あれからって、もう結構経つぞ」
「ああ。佐々木さんがインポになったとは思わないが、とにかく一緒にベッドに入っても肝心な行為はヤッてない」
「――それが事実として、どうして勝貴があいつらの閨の話を知ってるんだ? アーッ、まさか、隠しカメラで覗いてるんじゃないだろうな!」
二度あることは三度あるというが、勇一と時枝の間には、三度あることは四度あるらしい。
勇一の頭にゴツンと鈍い音とともに、ゴーンという痛みが直撃した。
「するかっ! 武史じゃあるまいし。俺の墓で大森がボヤイてたんだ。『俺達、一生このままセックスレスかも』って。大森が佐々木に罪悪感でできないのか、それとも佐々木さんが大森に気を遣いすぎてできないのか、詳しいことは知らないけどな。とにかくお前が芋虫みたいな小指を転がしたところで、しでかした罪は償えないってことだ。もちろん、勇一が悪いんじゃない。お前を責めているんじゃない。だが、罪は罪だ。詫びじゃなくて、償いは必要だ」
時枝の身の安全の為、東京では時枝は死んだことになっていた。
墓に時枝の名前が刻まれているのはそのためだ。
その墓には黒瀬の発案で外部からは見えにくいがWEBカメラとマイクが付いており、時枝のPC経由でやりとりができるようになっていた。
時枝がタイミングよくPCの前にいれば、会話も可能だ。
そう、墓地で墓に話かけていた勇一は、実際時枝に向かって話していた。
「…そうだな。残念なことに、今の俺には橋爪の名でしでかした全ての記憶がある。大森のことだけじゃない…この手は、血塗られている…勝貴に触れる資格もない。スマン…勝貴の顔が見れて、俺は浮かれすぎてた…ひっ、」
四度あることは五度ある…ということはなく、今度は頭ではなく、頬に時枝の平手が飛んだ。