その男、激震!(23)

「勇一じゃあるまいし、そう簡単にインポになるか! いや、そこは繊細な男ならなるか・・・だけど、それを言ったら、勇一が繊細だってことになる。それはおかしい」
「ぶつぶつ、何を言ってるんだよ、勝貴。俺じゃあるまいしって、俺がインポテンツみたいに言いやがって、失礼なヤツだな。今だってギンギンだったのに、勝貴が拒否るから仕方なく、お利口さんにさせているんだろ」 

ヨシヨシ、と幼子の頭を撫でるように、勇一が自分の股間を撫でた。

「はあ~、お前には記憶っていうのがないのか? 都合の悪いことは忘れやがって…。勃たなくなったことあったくせに…」
「ちょ、ちょっと待て! 俺だってアレは覚えているぞ。でもあれはインポじゃない。そのう、あれは、勝貴限定で…」
「もっと悪い!」 

三度目の鉄拳が勇一の頭に飛んだ。

「――いてぇ、って。本当に記憶がなくなりそうだから、もう、叩くなって。これ以上バカになったら勝貴だって困るだろ?」
「心配するな。お前はもう十分バカだから、それ以上バカになることはない。俺が保証してやる」
「…やっと会えたのに、バカとかアホとかじゃなくて、愛の言葉を紡いでくれても…」 

いい歳をした男が、拗ねた。
目が潤んでいるのは演出ではなく、三度殴られた頭がジンジンと痛むからだ。
だが、それが媚びを売っているように時枝には見え、ゾワッと背筋に悪寒が走った。
似合わないのにも程がある。

「――勇一、…分かってるだろ? 今更俺から愛の言葉が聞きたいのか?」 

悪寒を我慢して、時枝が勇一に優しく上目使いで問いかけた。 
ウンウンと、犬のように勇一が頭を上下に振った。
その勇一に時枝が座ったまま詰寄り、上半身を勇一に預けるようにして抱きついた。

「勇一、もちろん俺は、お前に惚れている。勇一を愛している」 

勝貴~~~、と、感極まった勇一が時枝に腕を回そうとしたところで、

「これで満足だろ。話、元に戻すぞ」

と時枝が勇一をポンと突き放し、後ろに下がった。