「それもある。だが、怒ってるんじゃない。呆れているんだ。ケジメってものがあるだろ。お前は中途半端な落とし前で、終わった気でいるかもしれないけどな。本当に後片付けはついているのか? 迷惑掛けた人達の手前ってことがあるんじゃないのか? 俺達の欲望だけ満たされていいのか?」
「―――……それって、佐々木達のことか?」
「そうだ、佐々木さんと大森ことだ。あの二人の今の状態を、どう思っているんだ?」
「今の状態?」
「…まさか、お前…、…知らないのか?」
「何を?」
はあ~、と溜息をついた時枝が、ゆっくりと腰を降ろした。
「足、大丈夫か?」
「正座はまだ無理だが、大丈夫だ。いいから勇一も座れ」
時枝の目から欲情の色はすっかり消えていた。
「座れ」
再度催促され、勇一も腰を降ろした。
「お前は正座だ」
「はい」
説教モードの勝貴に逆らうのは得策じゃないと、素直に勇一が従った。
「いいか、よ~く聞け、どアホ。自己満足な落とし前で終わったと思うなよ。お前が指を落とそうと何しようと、劣化バージョンの勇一が大森にさせたことは0にはならないんだ」
「劣化バージョンって…」
「橋爪は、お前の劣化バージョンだろうが?」
「――ごもっともです」
「本当に分かっているのか? 指詰めて終わりって話じゃないんだぞ? それで済んだ気でいるなら、お前は最低だ。噂では、組長のくせに若頭の佐々木さんと、ろくに会話もしてないそうじゃないか。大森とも。だからといって、あの二人の現状を把握してないってどうなんだ? 責任感じないのか?」
「あのぅ…、お言葉ですが…、俺とはその、まあ、壁があるのは確かですが…、佐々木と大森は…仲良く一緒にいるようですけどぅ」
恐る恐るといった様子で、勇一が控えめに反論した。
「だから、お前は、どアホなんだっ! ゴホッ」
涙で再会を実感したのは、つい先程のことだったはず。
それが夢だったと思える程、二人を取り巻く空気が、いや、時枝の態度が一変していた。