その男、激震!(20)

「ナマ勝貴だ――…」

再会できたことの喜びが、勇一を浸食するように埋め尽くしていた。

「・・・勇一、――泣いてるのか?」
「…うるせぇ…、黙って、泣かせろ…」
「はあ、情け無い組長だな…」 

という時枝の声も、湿っぽい。
自分を抱き締める勇一の身体に時枝も腕を回した。

「…勝貴、」
「――…勇一…、」 

もう言葉など必要ないと、しばらく無言のまま抱き合った。
お互いの肩が濡れていく。 
嗚咽を殺す荒い息づかいだけが、二人から洩れる。 
密着している下半身が、お互いの欲情を明白に語っていた。

「…抱きたい」 

布越しに二人の欲望を擦り合せながら、勇一が言った。

「もう抱いてる」
「…そうじゃなくて、分かるだろ?」 

時枝を抱き締めていた勇一の手が、徐々に下がる。
臀部の丸みに到着したところを、

「分からない」 

時枝の手がその手を払った。
そして時枝が、勇一から離れた。

「え?」 

流れを無視した時枝の行動に、勇一が間抜けな顔を晒した。

「お前の抱きたいって、どういう意味だ?」 

涙の筋の残った顔が、あきらかに怒っている。

「惚れた男を抱くって言ったら、そりゃ、セックスに決ってる」
「セックスなら、女としろ。ちなみに、惚れてなくてもヘボ組長はセックスぐらいするだろ」
「…あのぅ、…勝貴、急にどうした? 何を怒ってるんだ? 駅でのことか?」