「ナマ勝貴だ――…」
再会できたことの喜びが、勇一を浸食するように埋め尽くしていた。
「・・・勇一、――泣いてるのか?」
「…うるせぇ…、黙って、泣かせろ…」
「はあ、情け無い組長だな…」
という時枝の声も、湿っぽい。
自分を抱き締める勇一の身体に時枝も腕を回した。
「…勝貴、」
「――…勇一…、」
もう言葉など必要ないと、しばらく無言のまま抱き合った。
お互いの肩が濡れていく。
嗚咽を殺す荒い息づかいだけが、二人から洩れる。
密着している下半身が、お互いの欲情を明白に語っていた。
「…抱きたい」
布越しに二人の欲望を擦り合せながら、勇一が言った。
「もう抱いてる」
「…そうじゃなくて、分かるだろ?」
時枝を抱き締めていた勇一の手が、徐々に下がる。
臀部の丸みに到着したところを、
「分からない」
時枝の手がその手を払った。
そして時枝が、勇一から離れた。
「え?」
流れを無視した時枝の行動に、勇一が間抜けな顔を晒した。
「お前の抱きたいって、どういう意味だ?」
涙の筋の残った顔が、あきらかに怒っている。
「惚れた男を抱くって言ったら、そりゃ、セックスに決ってる」
「セックスなら、女としろ。ちなみに、惚れてなくてもヘボ組長はセックスぐらいするだろ」
「…あのぅ、…勝貴、急にどうした? 何を怒ってるんだ? 駅でのことか?」