その男、激震!(13)

 

『・・・ボン、あのう』

かなりの躊躇いのあと、出てきた言葉に黒瀬のこめかみが僅かに撓った。

「内容にかかわらず、明日以降生きてないと思うけど、何?」

名前を訊くまでもない。
相手は佐々木だ。

『申しわけございませんっ!』

受話器を持ったまま、頭を下げているのが手に取るようにわかる。
が、そんなことで黒瀬の機嫌が良くなるはずもなく…

「だから、用件は?」

抑揚のない冷たい声で、黒瀬が訊いた。

『大変なんですっ! 組長が、メモを残して消えました!』
「墓参りじゃ我慢できずに、時枝に会いにいったんじゃないの?」
『そうみたいです! メモには『勝貴のところに行く。組で困ったことがあれば武史に頼め』って書いてありました』
「ふふ、簡単な遺書だね」
『ボン、なんてこと、言うんですかっ! 縁起でもない』
「ボンボン、ウルサイよ、ゴリラ。時枝の所に行くなら、いいじゃない。小姑みたいな時枝と問題児の兄さんが二人とも消えて、ふふ、しばらくのんびりできそう」
『そんな~~~、組はどうなるんですっ!』
「しらない」

黒瀬が受話器を置いた。
それから電話のコードを引き抜くと、潤の待つ寝室へと戻った。

「誰だったの? 香港?」

トロンとした目を擦りながら潤が訊いた。

「ゴリラから。兄さんが時枝の所に行ったみたい」
「それって…、」
「墓じゃ我慢できなくなったんじゃない?」
「あまり、もたなかったね。でも、きっと時枝さんも組長さんに会いたがってると思うし…。二人とも向こうか…」
「潤、寂しいの?」
「黒瀬がいるのに、寂しいはずないだろ」
「なら、いいけど。ふふ、時枝が恋しいなら、お仕置きしようと思ってた」

ベッドの中に戻った黒瀬が潤の頭を撫付けながら言った。

「恋しくはないけど、俺にお仕置きしてもいいぞ? 黒瀬からされるお仕置きは、好きだから…。でも、今は駄目だけど…、今夜なら…」

潤が黒瀬を上目使いで見る。その目はしっとりと濡れていた。

「了解。じゃあ、今夜のお仕置きの準備はしてもいいよね?」

黒瀬の目が妖しく光った。その光に期待でゾクッと身体を震わせた潤が

「うん」

と答えた。
潤はその日一日、小型のローターを体内に留めて過ごす羽目となった。