その男、激震!(191)

★コミコミスタジオさまにて通販中。黒桐Co.企画応募用台紙付のタイトルは「その男、激震4」です★

 

翌日、時枝はルーシーの出で立ちでタクシーの中にいた。
行き先はサランの入院する病院だ。
勇一からの連絡が黒瀬経由で入ったのは昨夜のことだった。
黒瀬の横で潤のすすり泣く声が受話器の向こうから聞こえた。
人の気持ちの分かる青年には、今の状況が辛いのだろう。
幾度となく試練を乗り越えてきた潤は強い。
潤の強い精神を支えているのは優しい心だ。
サランと自分、その両方の心情を想い、涙が出るのだろう。
潤の中では、きっと勇一は悪者なんだろうな、と思うと少し可笑しくなった。

―――俺と勇一じゃ、勇一の方が何十倍も辛い…だが潤は勇一を怒ってるんだろうな…きっと今日のことも納得してないに違いない…

タクシーが病院の敷地内に入ると、勇一が手を振っているのが見えた。

「お待たせしました」

タクシーから下りた時枝が、勇一に軽く頭を下げた。

「ルーシー嬢は今日も麗しいな」

装飾のすくないシンプルな淡いピンクのワンピースに身を包んだ時枝は清楚な日本女性そのものだ。
胸には見舞いの花束を抱えている。

「この格好で良かったのか…少々疑問です。一応、着替えは持ってきました」

本当の自分の姿の方がいいんじゃないか、と時枝は迷っていた。

「細かいことは心配するな」

細かくはないだろ。
「ルーシー」と「時枝勝貴」じゃ大違いじゃないか!
彼女を安心させるのはどっちだ?

「大丈夫だ。行くぞ」

何が大丈夫なんだ!?
勇一は時枝から花束以外の荷物を強引に奪うと、サッサと歩き出した。

「ここだ」

サランが入院中の個室の前で、勇一の足が止まる。

「勇一さん、私は韓国語は挨拶程度しかできませんから、通訳お願いしますよ」
「任せておけ」

勇一がノックする。
細い声がドア越しに聞こえた。
勇一と時枝、二人一緒に中に入った。

 

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