その男、激震!(185)

★コミコミスタジオさまにて通販中。黒桐Co.企画応募用台紙付の新刊は激震4のタイトルです…★

文庫帯企画第三弾発送済です。(届いてない方いませんか?)

 

東京では勇一が潤と園田を引き連れて…というより潤が勇一と園田の先頭にたって、劣化版勇一を愛した女性の元に向かった。
彼女は都内の病院の緩和ケア病床にいた。
既に延命治療は意味をなさない段階だった。

「この部屋か」

案内された病室には、カタカナで彼女の名前が記されていた。
勇一の記憶にある名だった。
橋爪でもなく『イル』と呼ばれいてた当時の日々が鮮明に蘇る。
※無料配布の小冊子「after」参照。

「俺たちはここで待ってます」

勇一が深呼吸をし、中に入る。

「――サラン」

懐かしい顔が瞼を閉じ、横たわっていた。
頬が痩けるぐらい痩せてはいるが、溌剌としていた面影は残っている。

「イルだ、サラン」

勇一がサランの頬を手の甲で撫でながら名を呼んだ。

「サラン、苦労かけたな」

頬に温もりを感じたサランがうっすらと瞼を開ける。
狭い視界にぼんやり映った影。

「…」

そんなはずない、とサランが瞼を下ろす。

「サラン、俺だ。俺だよ。イルだ」

韓国語で勇一が優しく語り掛けた。

「…――、…ッ イルッ」

目を閉じたまま、サランが絞り出すように惚れた男の名を口にする。

「俺を見てくれないのか?」
「…ごめん、なさい、ごめん、なさいッ、ごめん、なさいッ……っ」

閉じたまま流れる涙。
拙い日本語での謝罪。

「どうして謝るんだ? サラン。目を開けてくれ。俺を見てくれよ、な、サラン」

頬を伝わるサランの涙を、勇一の指が優しく掬う。

「――イル…」

サランがゆっくりと瞼を上げた。

 

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