その男、激震!(183)

★コミコミスタジオさまにて通販中。黒桐Co.企画応募用台紙付の本は「その男、激震4」のタイトルです…★

文庫帯企画第三弾、月末か10月初めに発送予定です。

 

 

「ご無沙汰しております」

言葉通り、しばらく顔を合わせていない男が、濃いグレーのビジネススーツに身を包み、ドアの内側に立っていた。

「その節は不義理な行動をしてしまい、申し訳ございません」

男が佐々木に頭を下げる。

「金田、あれから元気にやっていたのか?」
「はい。若頭もお元気そうで…いや、少々疲労が顔に出ていますね」
「そうか?」

どれどれ、と佐々木が楽屋の鏡で自分の顔を確認する。

「そうか、じゃないでしょ! 若頭、コイツの出現に他に何かないんですか」

木村に理解不能なメモを残して消えた男、それが金田だ。
組に挨拶もなく消えた。
その点は白崎と同じだ。
金田は元経済誌の記者からヤクザへ転職したという変わり者だった。
学年でいうなら木村と同級だが金田が早生まれなので、生まれ年でいうと木村の方が一つ上だ。
それ故か金田は木村のことを「アニキ」と呼んでいた。
いかがわしいステージから二人で大喜を救出したこともあった。

「何かって言われてもな。そうだな…金田、結婚は?」
「若頭!」

木村の声は佐々木と金田の双方に無視された。

「そうですね…これからです、と言っておきましょう」

という金田の視線は木村に向く。

「こっちを見るな! あんたら二人、アホだろ…俺はもう限界だ。もう嫌だ。勝手にやってくれ…」

木村が椅子ではなく床に座り込む。