その男、激震!(211)

「さあ、ここからが本日のメインイベント。司会の私の手で、小花が艶やかな華に変わる瞬間をお楽しみ下さい」
 
木村にとってはかなり物騒な文言が観客に投げかけられていた。
言葉の壁で木村が理解できたのは「メインイベント」だけだった。

俺がメイン???
若頭より俺の方が貧相な身体だ! 
変に客を煽るなよ…失笑されたら、それはそれでショックだ……
 
間違った方向で木村が落ち込んでいると、ステージのライトが消えた。

「待ってくれ! まだ心の準備がっ!」

男二人に両腕を組まれていた木村が、ステージ中央へと引き摺られていく。

「心の準備? そんなものしても無駄ですよ」

近寄ってきた金田が、木村の耳元で広東語で囁く。
金田のネットリとした吐息に木村の肌が粟立った。

「何て言ったんだ!」
「愛の囁きですよ。脅える仔猫ちゃん」
 
今度は日本語で返ってきた。

「てぇ、んぐ!」
 
テメーと言い終わる前に、口を手で塞がれた。

「シッ。ライトが点きますよ。ショーが再開されます。私が全てヤってあげますからお任せを」

突然視界が明るくなり、観客席から歓声があがる。
両腕は男二人に組まれたままだ。
佐々木は自分で脱いで場を盛り上げていた。
木村も自分でなんとかするしかないと思ったが、腕は拘束されたままだ。
振り解こうとしたが、力強く組まれた腕はビクともしない。
おい、どうなってるんだ。若頭の時と違うぞ、
と進行役の金田に目で訴える。

「だから私がヤってあげますから」 
 
金田が木村のガウンに手を触れる。
同時にマドンナの「ライク ア バージン」が流れ出した。
 
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