その男、激震!(199)

★文庫の帯企画、第4弾応募受付始まりました! 今回はズバリ「勇一×時枝」です!
〆キリは8月31日です。ご準備まだの方はお急ぎくださいませm(__)m★

 

「――私を助けにきてくれたんじゃないんですか?」

冷静にならねば、流されたら終わりだ、と時枝は自分に言い聞かせた。

「もちろん、違うよ」
「そうでしょう、…え? 今、違うって言いました???」
「言ったけど」

聞き間違いじゃなかった。

「…あの、だったら何をしにココに?」

努めて冷静に時枝が訊く。

「仕事より面白そうだったから」
「・・・」

そういう男だ。
そういう男なのだ、黒瀬武史は。
彼が優しさを向けるのはただ一人。
彼の伴侶であり秘書でもある旧姓市ノ瀬、今は黒瀬となった潤だけだ。

「――それで、もうあなたの気は済みましたか? 困っている私に追い打ちをかけるように水をぶっかけてくれて、化粧だけじゃなく服も着替えが必要となってしまった。これで満足ですか?」
「満足? 何が?」
「質問に質問で返さない! 面白がりに来たんでしょ。面白かったですか?」

ああ、分かっているさ。
こういう男だと分かっているけど、苛つく!
無性に腹が立つ。

「声だけで愉しめというつもり? いい加減、姿を現したら? ふふ、私の想像を上回っているか楽しみ」

――この野郎っ! 何が想像だ。
いいだろ、そんなにこの酷い姿を見たいなら、見せてやる。
その代償として、絶対俺をここから出してもらうからな。
嫌とは言わせないぞ。
大声出せば、俺だけなく、武史も女子トイレに侵入した変態男だ!
クロセの社長が病院の女子トイレに潜んでいたってなると、世間が許すわけないっ!
俺の方が上位にいるってことを分からせてやる!

時枝が水に濡れた手で籠もっている個室のロックを解除した。

 

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