★コミコミスタジオさまにて通販中。黒桐Co.企画応募用台紙付のタイトルは「その男、激震4」です★ そろそろ文庫帯の準備を~~~4弾~~~
「ハア…」
男子トイレの個室から、深い溜息が漏れる。
「…ちゃんと伝わってない気がする…」
溜息の次は独り言だ。
「勇一なんかに任せのが間違いだった。自分でなんとか処理すべき案件だった」
声の主はルーシーの化粧が剥げた時枝だ。
「何が俺に任せとけ、だ。いつまで俺はここに閉じこもってなければならないんだっ! あいつ、まさか…忘れてないよな。建物を出た途端、明日のことで頭がいっぱいで忘れたってこと…うううう、あり得る!」
病室を出た時枝が崩れたメイクを治そうと女子トイレに駆け込み、そこに移った顔は通報レベルだった。
お化け屋敷で働けるぐらいドロドロに崩れた目元周辺。
しかもどう贔屓目にみても、女子の顔ではなかった。女装趣味の変態男そのものだ。
女子トイレ内で誰かに遭遇すると通報されると慌てて飛び出た。
「おい、どうした?」
トイレ前で待機していた勇一の声には応えず『女子トイレ入る前に止めろ、この馬鹿!』と、睨みだけ飛ばすと横の男子トイレに駆け込み、個室に入る。
幸い、他に人はいなかった。
女装姿を見られることもなく個室に入り、バッグの中から化粧道具の入ったポーチを探す。
「・・・」
そんなはずはないと、もう一度バッグの中に手を入れ、中を掻き回す。
「・・・・・・」
いやいや、まさか…と今度は着替えを入れてきた紙袋の中を探す。
「―――ない! ないない。な――ーいっ!」
ポーチがない。メイクの修正ができない。
このままじゃ、ここから出ることができない。
「何事だ? 外まで声が聞こえてきたぞ」
男子トイレの中に入って来た勇一が、個室の扉をノックしながら訊く。
「…俺、トイレの花子さんデビューかもしれない。一生ここで暮らす」
「…どうした? 声が花子さんじゃなくて、花太郎だ」
突っ込むところはソコか? と途方に暮れながらも時枝は勇一の反応に呆れていた。
「大事なものがないんです」
ルーシーで応えた。
「生理が来ないのか?」
「ハ?」
「ジュニアに兄弟ができるのも悪くない。これで二児の親か…任せとけ」
時枝は、この一瞬、ほんの一瞬だけ、自分の顔のことより、扉の向こうの男が心配になった。
何故なら、有り得ないことを真剣な声で語っていたからだ。
「任せられるか! ないのはメイク用品が入ったポーチだ!」
時枝が地声に戻る。
「ポーチ? あ、そういうこと。大事なものって言うからよ…女子がないっていったら普通は生理じゃね?」
「誰が女子だ!」
ドン、と中から時枝が扉を蹴った。
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