ヤクザ者Sの純情!18

食事が終わると、ご馳走さまと一言残し、佐々木は浴室へと消えていった。
二人分の食器は少なく、片付けに時間は掛からなかった。
台所を出ると、大喜は佐々木の寝室を探した。
顔の印象から畳に布団かなと思っていたが、ダブルサイズのベッドが置かれていた。
ホテルのようにきちんとベッドメイキングされている。
但し、枕は一つ。
大喜は一旦自分に与えられた客間に戻った。
客間にはシングルサイズのベッドが置かれている。
ベッドには、寝具が用意されていた。
誰が来ても直ぐに泊まれるようにしているらしい。
ベッドの上の枕を抱えると、佐々木の寝室に戻り、佐々木の枕の横に並べた。
そこで、忘れ物に気付く。
まだまだ、必要なものがあった。
佐々木とコトを構えるにあたっての必需品。
必要なものを買えと渡された五万円の一部で買った、大喜に最も必要なものを取りに、また客間に戻った。
箱ではなく、大学に行くときに使用している鞄の中を漁る。
底の方からグチャグチャに皺がよった紙袋を取りだした。
中身はイチジク浣腸と潤滑ゼリーとコンドーム。
料理本を買った日に、立ち読みで学習した同性とのハウツーセックス。
本の中には、まだ他にもグッズが紹介されていたが、取り敢えず薬局で買えるものだけ揃えていた。
潤滑ゼリーとコンドームを持って、再度佐々木の寝室へ。
それを先程持ってきた自分用の枕のカバーに隠した。
これで、この部屋の準備は終わったと客間に戻り、自分の準備を進めることにした。
準備…そう、それはイチジク浣腸だった。
別に使用してもしなくても、便意を感じてないときは降りてきてないので問題ないらしいが、大喜の中でその場所は排泄器官だから、できれば清潔にして迎えたいというのがあった。
浣腸自体もプレイになるらしいが、佐々木がそれを楽しむタイプとも思えない。
ましてや今日は自分から佐々木を襲う気なのだ。
用意周到し過ぎるぐらいで、ちょうどいいだろうとイチジク浣腸を手に取った。

「これぐらい、簡単だろ…アハハ」

実は浣腸という行為を経験したことがなかった。
手の中のピンク色の容器は可愛いしくも思える形だ。

「先端を挿れるだけだろ。えっと、説明書、説明書」

問題ないと、下衣を脱ぐ。孔の場所を確かめ、容器の先端を差し込んだ。

「一気に中身を押し出せばいいんだよな」

液体の入った膨らんだ部分を押す。

「ううっ、気持ち悪い」

口以外から身体の中に何かを入れた経験もない。
注射以外は点滴すらなかったことを思い出す。
チューっと音がした。最後の一滴まで入れる。
空の容器を見たときは、凄い大仕事を終えた気になった。
あとは薬剤が作用するのを待つだけだ。

「ダイダイ、部屋か」

空の容器をゴミ箱に放り投げた時、ドアが開きブルーのパジャマに身を包んだ佐々木が覗き込んだ。

「…お、前…、なにやってんだ?」

佐々木の視線が大喜の顔から下に降りていった。

「何って、…うわっ!」

下半身剥き出し状態だった。

「…悪い、最中だったか」

自慰行為の真っ最中と思われたらしい。

「ち、違うぞ。ほら、勃ってないだろ」

大喜は自分の小さく項垂れている中心を持ち上げて見せた。

「んなもん、見せるんじゃねぇ」

バタンとドアを閉められた。
ドア越しに「邪魔して悪かったな」 と、佐々木の声が聞こえた。

「オッサン、顔が赤かったよな。可愛い」

四十過ぎ、顔に傷を持つヤクザが自分の下半身を見て慌てて顔色を変える姿が大喜には可愛かった。

「おっと、それどころじゃなかった。…きた…きたきた…、腹が痛い…いて~~~~っ」

着替えを持ち、浴室へ駆け込む。
着替えを籠に置くと、その横のトイレに飛び込んだ。

「…それにしても」

身体の中から出るモノは全て出し終えた大喜は、浴室で身体を洗浄していた。
もちろん、排泄をしたばかりの、ソコを念入りに洗う。
早かれ遅かれ、身体から出ていくモノだ。
身体に害はないだろうし、スッキリしたと言えばスッキリしたのだが、毎回この作業するのは、しんどいなと思う。
準備段階なのに、既に穴周辺がヒリヒリしていた。
ここに、佐々木の一物を入れるのかと思うと、裂痔用の薬も買うべきだったと後悔した。
ゼリーもあるし、なんとかなるだろう、と気を取り直し湯船に浸かる。
痛いだけってことはないだろう、きっと気持ちも良いはずだと、ポジティブに考え直した。