その男、激震!(122)

黒瀬のマンションはエントランスから直通エレベーターに乗り込むまで、セキュリティが厳しく通常は建物内に入り込むのも難しい。
最近、更に厳しいシステムに変更したので、ロック解錠の桁数の増えたコードと予め指紋登録していないと扉が開かない。
佐々木の指紋は登録されている。
増えたコードもなんとか覚えた。
覚えさせられた…が正解だが…。
よって建物に入るまでは先程同様問題なかった。
直通エレベーターは直接黒瀬宅の中に止まる。
それ故に別途キーか解除コードが必要で、それを知らされていない佐々木と木村はインターフォンを鳴らした。

「はあ、はあ、疲れました…早歩きで息が上がるとは……ああ、最初に走ったからか……」
「木村、お前、幾つだ? だらしね~な。極道が体力なくてどうする。日頃の鍛錬が足りない証拠だ。これぐらいでバテるやつがあるか。鬱陶しい、離れろ。俺は電柱じゃね~ぞ」
「スイマセン、少しだけ、肩をお借りします…ハア…シンドイ…」

という佐々木と木村の会話がインターフォンを押す前に存在していたのだが、

「…黒瀬、コレ!」

カメラに映る二人の姿を確認した潤に、その会話は届いてなかった。

「ふふ、凄いね。しな垂れ掛かってる。ただならぬ関係に見えるけど」
「黒瀬…俺達、見てはいけないものを目にしてるんじゃ」

カメラ越しの映像では、佐々木と腕を組んだ木村が、佐々木に頭を寄り添わせ身体をピッタリと佐々木に寄せている。
仲の良い、または訳ありのカップルのようにしか見えない。
自分達の部屋に今から上がってくる桐生組の極道者二人というよりは、ラブホテルのエレベーターを待っている二人という方がぴったりとくる。

「カメラがあるって知ってるよ、佐々木は。見せつけたいんじゃない。ふふ、とにかく上がって来てもらおう。話はそれからだよ」

黒瀬は絶好の退屈しのぎを見つけたと内心でほくそ笑んでいた。
潤は画面に映し出された二人を見たまま素直に捉え、途惑っていた。

「ドアが開きます。乗って下さい」

ぶっきらぼうにインターフォンのマイクに向かう潤。
その潤の機嫌が更に悪くなる映像がモニターに映し出された。

 

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