その男、激震!(91)

 

「…最悪じゃないか。ああ、もう、ヘッドの下半身事情にうちがどうして振り回されるんだ。避妊すれば良かったことだろ。しかも、あの白崎だぜ。どっからどうみても、緑龍のつうか、お義母さんやナツキの脅威からはほど遠い。…いや、だから、裏から操りやすいか…最悪だ~~~」

勇一が頭を抱え呻り出す。そして、突然、吠えた。

「武史ィイイイ!」
「大声出さなくても聞こえていますよ?」
「お前、最初からこうなる可能性を考えて、桐生に押し付けただろ。白崎が有能でも無能でも押し付けたに違いない」
「ふふ、兄さんの脳細胞って時々活性化するよね。正解だけど蛇の道は蛇ってことで、健全なうちより桐生の方がマフィアのご子息を匿うのに相応しいじゃない。それに、ヘッドだって昔、桐生で預かっていたんでしょ。もともとそういう付き合いじゃないの」

それが元で翠は桐生を捨てたのだ。

「…何の因果だよ、全く…」
「組長さん、動いた方がいいんじゃないですか? うちで時間を潰してても白崎さんは見つかりませんよ」

潤の顔にはっきり『邪魔だ』と書いてある。
もう用なしだと言うことらしい。

「ふふ、これ、無能な兄さんにプレゼント。ココを訪ねて下さい」

黒瀬が勇一にカードを渡す。
名刺サイズのカードにはlily という英字が中央に書かれ下には電話番号らしき数字が並んでいる。

「…リリー。スナックか?」
「バーですよ」
「しばらく酒どころじゃないだろ」
「誰も酒を呑めとは言ってないでしょ。今すぐにでも行った方がいいと思いますよ。兄さんは無能なんだから」
「無能、無能って、さっきから言い過ぎだ…なるほど、そういうことか」

つまりそこに白崎を探すのに必要な何かが用意されているか、使える情報屋がいるかだろう。
プレゼントとも言っていたし。
何一つ掴めていないのだから、空振りでもなんでも行ってみるしかないだろう。
善は急げだ。
勇一が立ち上がる。

「邪魔したな。見送りは結構」
「誰も見送りませんよ。勝手にどうぞ」

弟の冷たい言葉を背に受け、勇一はマンションを後にした。