「あ、…あ、駄目だっ、ダイダイ、…出るっ」
出た。
本人的には夢精かも知れないが、実際は大喜による外的刺激により、佐々木は射精した。
むわっとした匂いが侵入者の鼻にも届く。
大喜の手を退け、その部分を懐中電灯で照らすと、パジャマの股間部分に染みが広がっていた。
「――なんだ…?」
佐々木の目が開いた。下着とパジャマの濡れが気持ち悪くて睡眠から覚醒したようだ。
その顔を侵入者が懐中電灯で照らした。
「うおっ、」
いきなりの明かりに、佐々木が顔を顰め吠えた…いや、呻った。
「うおって、まんま、ゴリラじゃねえかよ。わが弟のセンスは確かだってことか」
「な、な、な、なっ、」
佐々木が上半身を勢いよく起こした。
「な? ながどうした?」
酸欠の発作でも起こしたような一文字連呼に侵入者が笑いを堪えながら佐々木に訊いた。
「な、ぜっ、居るんですかっ!」
佐々木が横に寝ている大喜を胸に抱え込む。
「…ん、…オッサン、…どうした?」
寝ぼけ眼の大喜が目を擦っている。その手はついさっきまで佐々木の股間にあったものだ。
「いい匂いがする」
自分の手と、濡れた佐々木のパジャマから漂ってくる匂いに、大喜の鼻がクンクンと鳴っている。
「犬か」
佐々木と自分以外の声に、大喜が振り返った。
「あ―――っ! あんた、何してるんだっ!」
「何もしてない。してたのはお前と佐々木だろ。二人ともさっさと下を脱げ」
侵入者――勇一が、懐中電灯で交互に二人の顔を照らすと、佐々木の汚れたパジャマへとライトの光を移動した。