その男、激震!(33)

「組長!」

もう皆就寝中だろうと思っていたが、甘かった。
勇一が本宅の正門を通過した時点で監視カメラにその姿は捉えられており、玄関に辿り着く前に、組員総出の出迎えを受けた。
その中には、若頭の佐々木の姿も交じっていた。

「福岡にいらしてたんじゃ…」

佐々木が勇一から鞄を受け取りながら訊いた。

「ああ。行ってきた」
「しばらくお帰りにはならないものと…」

勇一の機嫌を伺いながら、佐々木が訊いた。
相変わらず二人の間の溝は健在で、視線が合うことはなかった。

「戻ってきて、悪かったか?」
「滅相もございませんッ! 早いお帰り、何よりです」
「勝貴に追い出された戻るしかないだろ。武史のところにも寄ってきたが、こっちでも追い出されたしな。三バカには関わりたくないらしい」
「三バカ、ですか?」
「俺とお前とお前んとこのガキ」
「…何かボンの気に触ることをしでかしたんでしょうか? …ぁあ、今朝の電話か? いや、でも、それならダイダイは無関係だ…」
「なにブツブツ言ってるんだ。皆、こんな時間に悪かったな。もう、散ってくれ。佐々木も自宅に戻っていいぞ」

勇一の言葉を受けて、失礼します、と各自の部屋や持ち場に戻っていった。
ただ一人を除いて。

「組長、アッシとダイダイは一体何をしでかしたんでしょうか?」

玄関の戸締まりを確認した佐々木が寝室に向かう勇一を追いかけ訊ねた。

「ふん、ナニもしてないから問題なんだ」
「はい?」
「あとは自分の頭で考えろ。俺は疲れた。風呂に入って寝る」

勇一は佐々木との会話を一方的に打ち切った。