その男、激震!(30)

「ぁん、」 

潤が黒瀬を体内に飲み込もうとしたまさにその時、

「邪魔するぞ!」 

黒瀬と潤の二人だけの愛の寝室に、第三者の声が飛び込んできた。

「ひっ! やぁっ、」 

突然の侵入者に驚いた潤は、浮かしていた腰の力が抜け…ヌルッと一気に黒瀬と結合してしまった。

「どういうことですか、兄さん」 

潤を抱きしめた黒瀬の視線の先には、東京にいないはずの桐生勇一が立っていた。

「お楽しみの最中だったか。ま、お前達のことだから、盛っているとは思っていたが、期待を裏切らないな」
「どうやってここに? パスワードを教えたことはないと思いますが。もちろん指紋認証もあなたのは登録してないはずですが」 

黒瀬の顔には笑みが浮かんでいた。 
怒っている証拠だ。
それも腹を立てているなんて可愛いレベルではなく、八つ裂きにして殺してやる、と本気で思っていた。

「…ふぅ、あ、…時枝さん、の…、部屋、から…なら…」 

黒瀬の質問に、侵入者の勇一ではなく潤が答えた――悶えながら。 
黒瀬の秘書だった時枝勝貴の部屋は、一つ下の階だ。
勝貴の部屋とこの黒瀬と潤の愛の巣は専用の室内エレベーターで繋がっている。
時枝の愛犬ユウイチを潤が預かり時枝の部屋で世話をしているので、エレベーターはいつでも使える状態だった。
つまり、時枝の部屋からなら、この愛の巣に乗り込むことができる。

「凄いな、お前の嫁は。その状況で頭ん中、働くんだな。それとも、そんな余裕があるってことは、満足した快感が得られてないってことか? そりゃ、毎日毎日やってれば、快感も感覚も麻痺するわな」
「ふふ、兄さん、自殺願望があるんですか?潤を貶めなくても、この部屋に無断で入ってきた段階で殺そうと思ってましたから、安心して下さい。ちなみに、どこかのお騒がせな中年カップルとは違って、私と潤のメイクラブは日々進化していますから。快感も感覚も兄さんの知らない未知の領域です。まあ、時枝なら知っているかもしれませんが」
「勝貴? どういう意味だ」