その男、激震!(26)

よし、準備はOK。
あとは… 照明を落とした薄暗い部屋にアロマキャンドルを灯し、ベッドサイドに消毒済みの様々なグッズを並べると、あとは自分の準備だけだと潤は纏っていたバスローブを脱ぎ捨てた。 

既に、朝から潤の身体への準備は施されていた。
内部に埋め込まれたローターに丸一日苛まれた身体は、どこもかしこも敏感で、肌を覆っていた衣類にも快感を覚えてしまうほどだった。特に黒瀬が遠隔操作でローターの振動を強にしたときなど、仕事中だというのに耐えきれず声が洩れた。
もちろん、直ぐに咳払いをして誤魔化したが、それが何度も続き、目の縁を赤く彩った潤は、何度「風邪ですか?」と訊かれたかわからない。 
だからといって、潤が黒瀬に抗議することはなかった。
むしろ、今夜への準備だからと思うと、被虐的な悦びと期待に見舞われた。
そして、仕事中なんだから、と文句を言わないことで、「耐えている」自分を黒瀬にアピールしていた。
だから、今夜はもっと激しくして…と。 

シャワー後の湿った肌に、甘いバニラの香のするシアバターを塗ると鏡の前に立つ。
足を開くと、ローターのヒモが間から覘いていた。
それを引っ張られるときの感触を想像するだけで、ゾワッと期待が身体に走る。 
一週間前に黒瀬によって付けられた赤い筋は全部消えていたが、毎日のように黒瀬の愛撫によって加えられる桃色の花弁は、白い潤の肌を妖しく飾っていた。
キャンドルのほのかな灯りに、左右の胸を飾るアメジストのピアスが輝く。
そのピアスを交互に揺らすと、甘酸っぱい痛みが走り、潤の目がトロンと潤み、目の縁が赤くなった。 
胸から手を下方に滑らせ、もう一箇所のピアスに触れた。
最もデリケートな部分に飾られたオパールのピアスは、潤が興奮すると角度の変化により姿を見せる。

「…黒瀬、」 

口に出すと、更に期待が上がってしまう。 
潤が自分の指を咥え、それを愛撫するように舐める。
自分の舌の動きと鏡の中のイヤらしい自分の姿に、ローターを食んだ内部がキュンと泣いた。 
淫剤などなくとも、発情する自分が潤は嫌ではなかった。
むしろ、誇らしかった。 
黒瀬の手によって開花され、愛されている証拠であった。
そして、黒瀬に悦んでもらえるなら、淫らに開発され続けたいと望んでいた。
それは新婚当時も今も変らない。